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津地方裁判所 平成8年(行ウ)1号 判決

原告

山際克男(X1)

山路宗治(X2)

山際清和(X3)

右三名訴訟代理人弁護士

向山富雄

被告

三重県知事(Y) 北川正恭

右指定代理人

河瀬由美子

安部幾男

木岡好己

意元英則

石井潤

坪井政人

"

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点1(本件総会の招集手続の法令違反の有無)について

(一)  原告らの主張(1)について

水協法四二条二項において監事全員のみの改選請求が許されることは、右規定の文理上明らかであり、そう解釈することについて、何らの不都合もないから、この点についての原告らの主張は失当である。

また、原告らは、訴外組合の監事の定員が三名であるところ、本件改選請求の対象が原告山際克男及び同山路宗治の二名のみであることをもって、右規定に違反する旨主張するが、本件改選請求がなされた平成六年五月三〇日当時、既にもう一人の監事であった山崎光弘は辞任し、欠員となっていたことは、前記第二の一3のとおりであり、右同日当時における訴外組合の監事は、原告山際克男及び同山路宗治の二名であったから、在任する原告山際克男及び同山路宗治の二名を対象とする本件改選請求が右規定に違反するものでないことは明らかである。

なお、〔証拠略〕によれば、訴外組合の定款附属書役員選挙規程には、役員欠員の補欠選挙は、辞任後三〇日以内になされなければならない旨規定されている(右規程二五条、二条二項)ところ、右期間内に補欠選挙がなされないまま、本件改選請求がなされたものであるが、補欠選挙に関する右規程違反があるからといって、正組合員の権利である本件改選請求が違法となるものではない。

したがって、右条項違反をいう原告らの右主張は失当である。

(二)  原告らの主張(2)について

〔証拠略〕によれば、(1)本件改選請求がされた平成六年五月三〇日当時、訴外組合の正組合員数は、三四二名であったごと、(2)本件改選請求署名簿に署名した訴外組合の正組合員数は二二九名であり、請求代表者二名を加え、本件改選請求の請求者数は二三一名であったことが認められる。右によれば、本件改選請求をした訴外組合の正組合員数は、水協法四二条一項の定める准組合員を除く組合員(正組合員)数の五分の一以上であることが明らかであるから、本件改選請求に水協法四二条一項の違反はない。

もっとも、〔証拠略〕によれば、本件改選請求署名簿の署名中には、署名名義人の家人が、名義人に代理して署名したものが相当数存在すること、家人らは、代理して署名した際、署名集めをした訴外組合の理事らに対して、事後に本人の承諾を得ることを約していたものであるところ、その後、訴外組合に対し、右家人らまたは署名名義人らから、本件改選請求署名簿の署名を承諾しない旨の申入れは全くなかったことが認められる。右によれば、本件改選請求署名簿中の署名中、名義人の家人が名義人を代理して署名したものについては、いずれも事後に、名義人が署名を承諾したものと推認することができる。そうすると、前記署名中、家人らが、代理して署名したものについても、名義人である正組合員の意思に基づく有効な署名であると認めることができる。

〔証拠略〕には、右認定に反する原告山際克男の供述部分があるが、〔証拠略〕の反対趣旨の小林茂文の証言部分に照らし、採用できない。また、〔証拠略〕ないし〔証拠略〕にも、原告らの主張に沿う記載が認められるが、〔証拠略〕の原告出際克男の供述部分自体によっても、同書証の中には、一部真実と異なる事実が記載されていることが認められ、その他の書証(〔証拠略〕)に照らしても、その記載内容の信用性には疑念を入れざるを得ないから、採用することができない。

(三)  原告らの主張(3)について

理事は、役員の改選を請求する書面が組合に提出された場合、請求者の真意を疑うに足りる合理的な事由があるときは、請求者の真意を確認するための調査義務を負うが、本件については、本件改選請求の請求者について、その真意を疑うに足りる合理的な事由があったことを認めるに足りる証拠はないから、訴外組合の理事が請求者の真意を確認するための調査をすべき義務があったものということはできない。したがって、この点についての原告らの主張も、失当といわざるを得ない。

(四)  原告らの主張(4)について

小林茂文及び中山洋人は、訴外組合の正組合員であって、水協法四二条一項所定の役員改選請求権があるから、右両名が訴外組合の理事であっても、本件改選請求をなしうることは当然のことであって、権利の濫用であるとする原告らの主張は失当であり、前記〔証拠略〕によれば、右両名が理事の肩書で、監事である原告らを批判している記載のあることが認められるが、右署名簿に署名しない正組合員が村八分になる恐れのあるような内容でないことは、その記載自体から明らかであるから、この点についての原告らの主張も失当である。

(五)  原告らの主張(5)ついて

水協法四二条二項は、特定の理事又は監事を改選する場合の理由については限定的に列挙しているが、全員改選の場合の改選理由については、特に明示をしておらず、組合の民主化を確保するために認められた正組合員の権利である改選請求権を限定すべき理由もないから、この点についての原告らの主張にも理由はない。

二  争点2(本件総会の招集手続の定款・規約違反の有無)について

(二) 原告らの主張(1)について

〔証拠略〕によれば、訴外組合の定款は、三四条において、理事に選出されたときに正組合員であった者が、正組合員でなくなったときは、その事由が発生したときに理事を退任する旨、同八条において、正組合員となる自然人の資格として、訴外組合の地区内に住所を有し、かつ、一年を通じて九〇日を超えて漁業を営み又はこれに従事する漁民であることを要する旨定めていることが認められる。そうすると、右定款の規定上、理事に選出されたときに正組合員であった者が、定款八条に定める正組合員の資格を喪失したときは、その資格を喪失した時点で、理事を退任したことになるものと解すべきであるが、ここに資格の喪失とは、資格のない状態が一時的に生じただけでは足りず、相当の永続性をもって継続することを要するものと解すべきである。

そして、〔証拠略〕によれば、(1)寺田睦は、真珠養殖業を営む漁民として訴外組合の正組合員となり、同資格の下に訴外組合の組合長理事に就任した者であること、(2)寺田睦は、平成五年ないし同六年当時実際には真珠養殖を営んではいなかったが、真珠養殖の漁業権を有していたため、訴外組合は、寺田睦を、定款八条の資格を喪失したものと認めることはせず、正組合員として遇していたこと、(3)平成五年度の訴外組合の組合員資格審査委員会において、寺田睦の正組合員資格がない旨の審査がなされたが、寺田睦は、同審査に対し、異議を述べず、平成六年五月三〇日、訴外組合の組合長理事を辞任したこと、以上の事実が認められる。

以上の事実によれば、寺田睦は、平成五年ないし平成六年当時、実際には漁業を営んでいなかったが、漁業権を有していたため、漁業を営まない状態が永続性をもって継続するかどうかは不確定であったところ、訴外組合の組合員資格審査委員会において正組合員資格がない旨の審査がされ、かつ、平成六年五月三〇日、同人が、右審査に対し、異議を述べることなく、訴外組合の組合長理事を辞任したことにより、正組合員の資格のない状態が永続性をもって継続することが確実となったため、寺田睦は、同日、訴外組合の正組合員の資格を喪失し、訴外組合の組合長理事退任の効果が生じたものというべきである。

したがって、寺田睦が、平成六年五月二五日に、訴外組合の組合長理事として、本件総会の招集を議決した理事会を招集したこと及び本件改選請求が、同月三〇日、寺田睦宛にされたことについて、原告ら主張の違法はないから、原告らの右主張は失当といわざるを得ない。

(二) 原告らの主張(2)について

〔証拠略〕によれば、訴外組合の定款5章の3には、理事会を招集するに当たり、議決事項を通知することを規定した条項はないから、定款違反の事実は認められない。また、〔証拠略〕によれば、訴外組合の規約上、「前項の招集(理事会の招集)の通知は、緊急やむを得ない場合を除き、会日の三日前までに開催の日時、開催の場所及び会議の目的たる事項を示してしなければならない。」と定められていること、前記理事会の招集通知には、本件改選請求の件を議案とする旨の記載がなかったことが認められる。

しかし、前記第二の一4(一)認定のとおり、本件改選請求がなされたのは、同理事会が開催された平成六年五月三〇日当日であるから、本件改選請求を議案とすることは、右「緊急やむを得ない場合」に該当するものということができ、同理事会の招集通知に本件改選請求の件を議案とする旨の記載がなかったことが規約違反であるということはできない。

したがって、この点についての原告らの右主張は失当といわざるを得ない。

(三) 原告らの主張(3)について

訴外組合の理事会が、本件改選請求に基づき、平成六年五月三〇日、監事全員の改選を審議するための本件総会を同年六月一九日に開催することを議決し、右山際徳幸が、「代表理事組合長職務執行者」の肩書で右総会を招集したことは前記第二の一4認定のとおりである。

そして、〔証拠略〕によれば、寺田睦が平成六年五月三〇日の理事会で前記第三の二(一)認定のとおり、組合長を辞任したので、直ちに右理事会の議決により、理事浜口悦生が組合長職務執行者に選任され、同人は一旦これを受諾したが、右理事会終了後の同日夜、右受諾を撤回したので、翌三一日に招集された緊急理事会の議決により、理事山際徳幸が組合長職務執行者に選任されたことが認められる。

ところで、訴外組合の定款には組合長職務執行者と称する役職はないが、山際徳幸は、右のとおり組合長が欠けた後、理事会の正当な議決により組合長職務執行者に選任されたものであり、前記第二の一2認定のとおり、訴外組合の定款(三〇条)で、組合長は理事のうちから理事会の議決により選任されることが規定されていることからすると、山際徳幸は、右議決により、組合長ではない定款に記載されていない役職に選任されたと解することは不合理であって、職務執行者の文言及び右選任の経緯からして、単に組合長に選任されたものと解するのが、相当である。

したがって、本件総会は、組合長である山際徳幸により招集されたものであるから、これを違法とする原告らの主張もまた失当である。

三  よって、本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山川悦男 裁判官 新堀亮一 藤井聖悟)

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